TSUGARU SHAMISENの基礎知識 1 スクイとハジキ

TSUGARU SHAMISENの基礎知識 1 スクイとハジキ

 

ダイナミックなサウンドでポップスやロックとの相性も抜群な津軽三味線。そんな津軽三味線のサウンドを忠実にソフトウェア音源化したのがSonica Instrumentsの「TSUGARU SHAMISEN」です。

TSUGARU SHAMISENは、シンプルな操作(打ち込み)でもリアリティー溢れる演奏表現ができるように作られていますが、アーティキュレーション(奏法)や楽器自体の構造や振る舞いを知っていると、さらに生々しいデータを作ることが可能です。

そこで今回は、津軽三味線の基本奏法のひとつ「スクイ」と「ハジキ」と、その2つを組み合わせた定番フレーズをご紹介させていただきます。

実際にTSUGARU SHAMISENで打ち込んだデータと音声もご確認いただけますので、ぜひご活用ください!


スクイってどんな奏法?

 

津軽三味線は撥(ばち)で糸(弦)を上から下に向かって叩くように打ち鳴らすのが基本ですが、反対に下から上に向かって、ちょうど糸をすくい上げるように鳴らす奏法が「スクイ」です。ちょうどギターのアップ・ピッキングに相当する弾き方です。

打ち(ダウン)に比べて音量も小さく、アタックが柔らかめのサウンドになるのが特徴。スクイだけでフレーズを演奏するというよりも、ダウン・ピッキングやこの後で紹介するスクイなど、他の奏法と組み合わせて使われるのが一般的です。

TSUGARU SHAMISENではキースイッチ「D#0」で切り替えられる「Up Picking」で表現することができますが、Alternate Pickingの機能を使用するのが便利です。「play」パネル内にある「Key off Alternate Picking」がONになっているときに(初期設定でONになっています)、サスティン・ペダル(MIDI CC#64)を踏み込んだ状態でDown Pickingを発音すると、ノートオフのタイミングで自動的にUp Pickingが発音される仕組み。これを打ち込んでみると、こうなります。

前半がキースイッチを使った場合。後半はAlternate Pickingを使ったデータです。

キースイッチを含めて打ち込むノートの数が減らせるだけでなく、ノートオフ時にUp Pickingが発音するので、Down Pickingのデュレーションでフレーズのノリをコントロールしやすくなるのでニュアンスを付けやすいのも特徴です。

余談ですが、スクイは津軽三味線に限らず日本の弦楽器に広くみられる奏法です。
例えば箏の場合は爪の裏側を使って、弦の奥側から手前に向かって弾く奏法を「スクイ爪」と呼びます。KOTO 13KOTO 20KOTO 17でも、もちろん再現が可能です。

 

ハジキってどんな奏法?

一方の「ハジキ」は、左手の人差し指、中指、薬指で糸を弾いて鳴らす奏法です。ギターのハンマリング・オンやプリング・オフをイメージすると分かりやすいと思いますが、撥で叩いている訳ではないので、アタックの柔らかいサウンドが特徴です。

こちらも他の奏法に織り交ぜながら使ってフレーズを作っていきます。

TSUGARU SHAMISENでは、キースイッチ「F#0」で切り替えられる「Hajiki(Hammering /Tapping)」で表現することができます。
また、同じ弦の音を重なるようにレガートで打ち込むことで、自動的にHajikiを発音させることもできます。下図のように打ち込むと、前半はすべてDown、後半はレガート演奏させた音のみHajikiが発音されます。

 

スクイとハジキを組み合わせたフレーズ

この2つを組み合わせることで、津軽三味線らしいフレーズを作ることができます。

その中でも、特に有名な「4300 ハスハ」のフレーズを紹介します! ”かまし”や”チリタラ”など色々な呼び方があるのですが、どんなフレーズにも取り入れやすく、しかも津軽三味線らしいフレージングになるので、ぜひ試してみてください!

4300…この数字は棹を押さえる位置、つまり音程を表しています。
楽譜で見るとこうなります。

 

3本の横線がそれぞれの糸、そこに書かれた数字が音程を表現しているので、ギターやベースで使われるTAB譜と同じように考えればOKです。

津軽三味線はギターのようなフレットはありませんが、押さえる場所のことをツボ(勘所)と呼んでいます。
また、津軽三味線では音程の低い方から「1の糸」「2の糸」「3の糸」となり、ギターやベースとは逆に数えていくので注意してください!

そして数字の下に書かれた「ハ」や「ス」が奏法の指定。つまり4を叩き(ダウン)、3をハジキ、0でスクイ、最後に0をハジキで演奏するというフレーズです。
実際に打ち込んでみると、こうなります。音声データは前半はゆっくり、後半は倍のテンポで鳴らしてみました。

ここでは二上がりのC(C / G / C)の調弦を使っていますので、4のツボがF、3のツボがD#、そして開放弦がCとなります。

同じフレーズを1の糸や2の糸で演奏したり、フレーズを変化させたりと様々な応用もできるので、ぜひご自身のフレーズに取り込んでみてください!