KOTOシリーズ 3製品の違いと使い分け

Sonica Instruments 製品の使いこなしTips。今回は「KOTO シリーズの違いと使い分け」をテーマにお送りいたします。

現時点で 「KOTO 13 Version 2」「KOTO 20」「KOTO 17」の3タイトルがラインナップされていますが「どのタイトルを選べば良いの?」とお問い合わせをいただくことも多いので、改めて楽器としての役割の違いから使い分けまで、お箏の基礎知識をご紹介してみたいと思います。


箏と琴

日本を代表する和楽器として、目(耳)にする機会が多い「箏」。同じく“こと”と読む「琴」の漢字を思い浮かべる方もいらっしゃると思いますが「箏」と「琴」は違う楽器ということはご存知でしょうか?

私たちが“おこと”と聞いて想像するのは箏の方なのですが、箏という漢字が常用漢字ではないことから、代用として「琴」の字が使われてきたのが理由とされています。

箏と琴の大きな違いは「柱(じ)」の有無です。

柱は弦楽器の駒やブリッジに相当する部品で、箏の胴に立てて絃を支えるのが役割で、柱を立てる位置で各絃の音程を調整(チューニング)するという大切なパーツです。

箏はギターやベースと違ってフレットがないため、1つの絃で鳴らせるのは1つの音程のみ。つまり絃の本数分の音程しか演奏することができません。そこで、柱の位置を左右に動かしたり、左手で絃を押して音程を変えるというテクニックが使われます。

そんな箏が日本に伝わってきたのは奈良時代。当時は貴族の間で雅楽の演奏に使われはじめ、現代に至ります。

弦楽器の駒(ブリッジ)に相当するのが柱です。

それに対して、琴には柱がありません。中国の古琴「クーチン」が有名ですが、柱の位置で音程を付ける代わりに13箇所の印(徽)が付けられており、左手で印を押さえることで音程を決め、右手で絃を弾いて音を鳴らします。

余談ですが、日本には箏が伝わってくる前から「和琴(わごん)」という6絃の楽器が存在していました。弥生〜古墳時代から使われていたようで、日本最古の楽器とされています。和琴は雅楽の楽器の中で最も格式の高い楽器として扱われており、今でも宮中祭祀で使われています。


現在の箏曲の基礎

雅楽の楽器として使われていた箏が、大きく形を変えるのが江戸時代です。

音楽家の八橋検校(やつはしけんぎょう)が調弦を都節音階へ変え、”段もの”という形式を確立。数々の名曲を生み出しました。箏曲として非常に有名な「六段の調べ」も八橋検校の作と伝えられています。

諸説ありますが、和菓子で有名な「八ツ橋」も八橋検校を偲んで箏の形を模して作られたものが起源という説があるほど。それだけ大きな影響を与えた人物でした。その後、生田検校や山田検校といった箏曲家の登場によって現代に伝わる箏が形式作られていきます。

ここまで歴史の話が多くなってしまいましたが…、箏は非常に長い歴史を持つ楽器です。かなり省略してしまった部分も多いので、興味を持たれたらぜひ調べてみてください。興味深い歴史やエピソードがたくさん見つかると思います。


新箏の登場と、箏の新たな可能性

今回のテーマである十七絃、二十絃が登場するのは大正時代に入ってからのことです。それまで箏というと13本の絃を持つのが一般的でしたが、近代に入り音楽や演奏が多様化していく中で、それに対応するように箏にも変化が生まれたのです。

十七絃は、お正月の代表曲「春の海」で有名な宮城道雄氏が考案した楽器です。弦を増やし、低域を拡張することで合奏時に低域を担う目的で考えられたようです。

低音楽器のため、一般的な箏よりもひとまわり大きく、太い絃とそれに耐えるために爪も厚いものが使われます。
ヴァイオリンに対するチェロのような関係にあり、低域を支える伴奏楽器だけでなく独奏楽器としても十七絃はメジャーな存在になっていきました。

二十絃は箏曲家の野坂恵子氏と作曲家の三木稔氏によって作られた楽器で、当初は名前通り20本の絃が張られていましたが、その後改良されて21本の絃が張られるようになりました。
13絃に比較して低域と高域に拡張されているので、音域が広がり主に現代邦楽で使われています。

それ以外にも二十五絃、三十絃、さらには八十絃など、新たな音楽表現を実現するために沢山の箏が考案・開発されてきた歴史があります。


音色の違いを聞き比べてみよう!

これらを踏まえた上で、KOTO 13 Version 2(十三絃)、KOTO 17(十七絃)、KOTO 20(二十絃)を改めて見てみましょう。
弦の数はもちろん、音源として見たときに一番異なるのがサウンドの違いです。実際に各タイトルを使って打ち込んだサウンドも用意しましたので、ぜひご自身の耳で聞き比べてみてください。

KOTO 13 Version 2

上品で華のあるサウンドが特徴なのが「KOTO 13」。おそらく「箏」という楽器をイメージしたときに、多くの人が思い浮かべる音色は「KOTO 13」でしょう。

KOTO 17

「KOTO 17」は、重厚で厚みのあるサウンドが魅力です。KOTOシリーズの中でもっとも低い音(G0)までカバーします。楽曲の低域を担わせたい場合や、柔らかな音も得意なのでソロ楽器としてしっかりとした存在感が欲しい場合に重宝することでしょう。

KOTO 20

もっとも広い音域を持つ「KOTO 20」は箏の雰囲気を持ちながらも、どこか異国感の漂うなオリエンタルな響きが魅力です。現代曲に使うほか、ハープの代わりに使っても面白いキャラクターが得られます。


調弦の違い

続いて調弦を見比べてみましょう。
KOTOシリーズでは、各絃を白鍵に見立てて演奏できるのが一つの特徴で、これによって箏ならではの演奏ニュアンスやグリッサンドを表現しやすくなっているのですが、KOTO 13 Version 2と、KOTO 20およびKOTO 17では調弦の考え方が少し異なります。

KOTO 13 Version 2は、古くから箏で使われてきた伝統的な音階が基本になっており、音源を読み込んだ際のデフォルトは箏の最も基本的な調弦である平調子(ひらぢょうし)をはじめ、28種類の調子がプリセットされています。

KOTO 13 Version2には、箏で使用される日本の古典スケールをプリセットしています。

それに対して、KOTO 17とKOTO 20では古典音階ではなくアイオニアンやナチュラルマイナーといった西洋音階を収録しています。これは十七絃や二十絃が一般的に7音階で使われることが多いためです。

KOTO 17とKOTO 20では、西洋音階をプリセットしています。

実際には、その曲を演奏するために様々な調弦が使われるのが箏という楽器です。その自由度を再現するために、KOTOシリーズでは絃ごとの音程を自由に変更できるユーザー・スケールや、絃や調弦を意識せずにキーボード演奏が可能なクロマチック・モードも使用できるので、どのタイトルでも同じ音階を奏でることができます。

全製品ともに、各絃の音程はもちろんファインチューン、ボリューム、パンを細かく指定することもできます。

しかし楽器自体が本来持っているサウンド特性が異なるため、同じスケールで同じ音程の音を鳴らしても印象はまったく違った印象になります。


まとめ

今回のblogはだいぶ長文になってしまいましたが…。KOTO シリーズ3タイトルの使い分けは、実は非常にシンプルで「どんな音が欲しいのか」これに尽きます。ヴァイオリンとチェロ、ソプラノサックスとアルトサックスとまったく同じように、箏も楽器としての用途や求めるサウンドに応じて使い分けていただければと思います。

各製品は単体購入のほか、KOTOシリーズ3タイトルをお得にご購入いただけるバンドル製品「KOTO Three Sisters」もラインナップしておりますので、ぜひご覧ください。