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– On Our Tenth Anniversary Message

Japanese Taiko Percussion for BFD2のリリースから10年、Sonica Instrumentsはソフトウェア楽器の開発を通じて邦楽器の真の姿を伝えるべく、歩んでまいりました。私達が邦楽器をソフトウェア音源化することは、単に便利でリアルなフェイクを作ることを目的としていません。日本の音を正しく美しい音で鳴らし、世界中の人々に届ける。そしてその音を奏でる素晴らしい才能を持った邦楽演奏家がいること、美しい日本の音があることを伝える。それが私達の目的であり、使命です。記念すべきこの時を迎えるに際し、協力してくださった邦楽の演奏家の皆さんと、私達の製品を支持してくださったファンの皆様へ多大なる感謝を申し上げます。

10周年を記念して特別なコンテンツを用意しました。
KABUKI & NOH PERCUSSIONで演奏協力していただいた囃子打楽器演奏家の望月太喜之丞様をお迎えし、四拍子(小鼓・大鼓・太鼓・笛)による歌舞伎の囃子演奏を収録した貴重な映像です。3つの打楽器と笛、掛け声だけの迫力ある演奏をぜひご視聴いただき、邦楽と演奏家について関心を持っていただければ幸いです。

小鼓・太鼓:望月太喜之丞 / 笛:福原百七 / 太鼓・小鼓:川島佑介 / 大鼓:堅田喜三郎
撮影協力:梅若能楽院会館

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Issei

一声

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そもそも「一声」とは、選挙の時に『第一声をあげる』の語源と言われるように登場人物が舞台に姿を表し、初めて謡を謡うところをさす言葉。能では基本的にはシテや脇また、少し違う形で狂言で舞台に現れるときの登場楽で様々な形式がある。「一声」の登場楽で舞台に現れる人物像は千差万別、化身や霊だけではなく「羽衣」では漁師が、「曽我物」では「曽我兄弟」が、どんな人物にも使う。歌舞伎音楽ではさまざまな登場人物の登場に使う。また、これを短縮、変形したものが使われることがほとんど。

Ranjyo

乱序

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能楽「石橋」の囃子。「連獅子」「鏡獅子」など、歌舞伎音楽のいわゆる「獅子物」でも演奏される。伝説の霊獣「獅子」の登場に際し、笛、小鼓、大鼓、締太鼓の「四拍子」で勇壮に演奏される。獅子の登場を予感をさせる「前乱序」から始まり、大小鼓の「露の段」でしばし深山幽谷の静寂を表現した後、勇壮な獅子の登場となる。能楽囃子と歌舞伎囃子、また流儀によっても少しずつ内容は違うが、大筋の手順は同じである。

Kurui

狂イ

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「乱序」と同じく能楽「石橋」、歌舞伎音楽の「獅子物」でも演奏される。能楽では段ごとに緩急が強く、また演出によって寸法が変化することがあるが、歌舞伎音楽では一部の例外をのぞいて同じ寸法で演奏される。また能楽では「渡り拍子」と称し、笛の唱歌が打楽器に一拍先行して区切られるが、歌舞伎では笛の唱歌に合わせて三味線の「合方」が作曲され、それに打楽器が合わせた形で区切りを合わせているので「渡り拍子」にはならない。

Chu no mai

中之舞

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能の舞事の一つ。速くもなく遅くもなく「中くらい」の速度で演奏されることから、能では「舞の基本」ともいわれる。女性や貴族、また狂女など、さまざまな曲で回れる。大小鼓と笛で演奏される「大小中之舞」と、これに太鼓が加わる「太鼓中之舞」がある。基本は五段(三段のことも)である。歌舞伎音楽でも「中之舞」と称する手組は多々存在するが、その速度は曲によってまちまちで、段をとることもあるがあまり多くない。

Itutsugashira – Abare – Iwato – Sarashi

五ツ頭〜アバレ〜岩戸〜サラシ

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典型的な歌舞伎の、しかも「江戸荒事系」の囃子の手組。これらの手組を演奏する時、舞台の上にはたいがい顔に「クマドリ」をした人物が存在する。「五ツ頭」は「カシラ」という強い音を五回打つことで、人物はこれに合わせて見得を切ります。「アバレ」「岩戸」という名前は「ヤンチャ」で「力持ち」というキーワードが、また「サラシ」は本来は「布を晒す」という意味だが「強大なものを力で押し動かす」という意味でも使われる。

– Music of Kabuki Hayashi Ensemble

歌舞伎音楽と長唄囃子

The Music of Kabuki and Nagauta Hayashi Ensembles

歌舞伎音楽においてその打楽器と笛のセクションである囃子は「歌舞伎囃子」ということですが、元は「能楽囃子」といわれる日本の伝統的な演劇である「能」の打楽器と笛による伴奏音楽でした。多くの場合、長唄とともに舞台上に出て演奏すること(これを「出囃子」といいます)から「長唄囃子」とも呼ばれます。初、歌舞伎という江戸時代の始めに京都の四条河原において発祥した芸能に伴奏に参加したのはその能楽の囃子だったそうです。しばらくして三味線が普及したところ、その表現力の豊かさゆえに歌舞伎音楽の主役は取って代わられ、囃子は新たに三味線音楽の伴奏としての進化をすることになります。

先人たちは四拍子(しびょうし/笛、小鼓、大鼓、締太鼓の4種類のこと)による能楽の謡いや舞のリズムを支えるための演奏から、三味線音楽の自由なリズムやメロディに自在に追従するためにさまざまな工夫を凝らしたものと思います。能楽において囃子は「音楽の骨組みを担っている」という意味でドラムス的な印象ですが、三味線音楽においてはどちらかというとパーカッション的な存在なのです。こうして「チリカラ拍子」のような特殊な奏法も開発されました。また歌舞伎の演劇的な進化に伴い、大太鼓や鉦などさまざまな種類の打楽器や笛を使い分けることで、多くの意味や情景を表現できるようになっていきました。こうして「歌舞伎囃子」また「長唄囃子」とも呼ばれる重要なパートとして存続してきたのです。

これは三味線音楽のみならず他の伝統芸能にもいえることだと思いますが、これら古典といわれる音楽では大勢での合奏でも指揮者というものが存在しません。タテと呼ばれるパートごとのトップが主に演奏をリードしますが、演奏者各々が常に全体の進行を見渡し、自分の立ち位置を認識しつつ演奏することが非常に重要です。そうすることで初めて、調和のとれた演奏が成立します。

近年では演奏技術の向上から邦楽器による現代音楽の作曲、演奏というものが普通になってきています。指揮者が存在することで初めて演奏が成立する大編成の曲もあります。それはそれで貴重なことだと思うのですが、その多くは和楽器による西洋音楽の演奏に思えてなりません。それは私たち日本人が英語を操るような感覚に近いものです。私は音楽を語学にたとえてお話することがよくあるのですが、日本の音楽は表意文字の漢字と表音文字の「かな」の混ざった日本語の書き言葉のように、また西洋の音楽は表音文字のアルファベットのように感じるのです。

表意文字のところはその文字の意味を知りませんと音だけでは理解できませんが、表音文字の部分は聴くだけでその意味を感じることができます。これはまず文化的な違いであり、すなわち音楽言語として大きな相違です。私はこのことを踏まえた上でも、あえて古典も現代音楽も同じ線上にとらえて考えていきたいと思うものです。

私は未来において、日本語の現代音楽を世界に発信することがごく普遍的になることを夢見ています。そしてその夢に相反することのようですが、世界中の作曲者が自身の作曲に気軽に邦楽器のパートを書き込むことができる日がくることも願って止みません。
(文:望月 太喜之丞)

望月太喜之丞(邦楽打楽器演奏家)Takinojo Mochizuki — master traditional Japanese percussionist
望月太喜之丞は小鼓、太鼓等、日本の伝統的な打楽器である邦楽打楽器の演奏を専門とし、歌舞伎音楽から現代音楽まで、幅広い演奏活動を通して、民族音楽としての邦楽と邦楽打楽器の可能性を追及しています。

– Staff

Directed by Tomohiro Harada
Film Editing: Yoshitaka Koyama
Cinematography: Myonchol Kim
Assistant: Kenji Kagawa, Yuko Munakata
Photography: Kenji Kagawa
Recording Engineer: Tomohiro Harada
Recording support: Rataro M
Translation: Craig Leonard
Executive Producer: Tomohiro Harada

Special Thanks:
Media Integration, Inc.
Apogee Electronics Corp.
Pino Inc.

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